ねこのあな


― 森のねこのたわごと ―


お店が開いてない?!(またまた北欧ねこ三昧珍道中記 9)

次の日は雨の日曜日でした。
この日はキャットショー会場へまた行って、今泉さんの子になるねこを受取ってくるだけの予定でしたから、私たちはのんびりと夕べの火事騒ぎをボヤいたりしながら朝食を取り、雨だけれど少し観光しようと決めました。
前回の旅行でのスウェーデン王宮のことを思い出し、ノルウェー王宮もすぐ近くだから見に行くことにしたのです。

冷たい雨が降るオスロの街は暗く、人通りもほとんどありません。
海外で日曜を過ごした経験がある方ならおわかりでしょうが、日本と違って日曜の街は深閑としています。お店もほとんど開いていないのです。
今を去ること十数年前、お友だちと香港に遊びに行く計画を立てていたら、香港駐在から帰って来たばかりだった人から「遊びに行くならクリスマスがいいよ、すごくきれいなんだよ」と言われ、それを信じてクリスマスに行ったばかりに、ごはんを食べるのにも苦労するはめになったことがあります。仲良しの先輩が駐在していたので、同情してあちこち連れて行ってくれて救われましたが、開いているのは日系のデパートばかりで最低でした。そりゃ、クリスマスのイルミネーションはきれいだったけど。
帰って来てクリスマスに行くことを推薦してくれた本人に文句を言ったところ「え、クリスマスなんかに行ったの? そりゃだめだよ。お店なんてどこも開いてなかったでだろう?」と言われて愕然としたことがあります。イシイさん、あんたが薦めたんでしょうが!!
いや、昔の怒りはおいといて、オスロの街も、当然のことながら、どのお店も閉っており、恐ろしく静かでした。

そんな静かな街を、私たちは元気ににぎやかに歩いていました。あきさんと京子ちゃんは初めてですが、私は2回目、今泉さんに至っては4回目のオスロなのに、まだ一度として観光をしたことがなかったので、それだけでうれしかったのです。
駅の方から続くだらだら坂を登って行くと、やがて王宮へ辿り着きました。
広い階段を登って行くと、そこにはバーンと王宮があって、スウェーデンのように衛兵がきらびやかに立っていて...と思っていたのに、想像とは全く違っていました。
なんというか、非常に静かで地味なのです。
確かに荘厳な雰囲気ですが、衛兵が2ケ所に佇んでいて、数分置きに短い行進をして、ほんとにそれだけです。雨の日曜日、それも午前中ということもあってか、観光客も私たちの他に1組いるだけでした。
期待が大きかった分、なんだか気が抜けてしまいました。
一応写真などを写してから、しかたないのでホテルの方へ戻ることにしました。

いくら日曜日だとはいえ、時間が経てば駅の近辺ならお店も開くのじゃないかと考えていたのですが、それは日本人の甘い考えだったようで、いつまでたっても駅のそばのファッションビルさえ眠ったままです。
それでも今日はお買い物がしたいという京子ちゃんを除いた3人は、諦めてキャットショー会場へ向かうことにしました。
もしかしたらお土産屋さんなら開いているお店を見つけることができるかもしれないし、と希望的観測に立つ京子ちゃんのことを心配しながら私たちは電車に乗り、ショー会場へ行きました。

ここでまたマリアンヌさんと彼女の優しくて剽軽なボーイフレンドに会い、目的のノルウェージャンの男の子・リアムくんを受取りホテルに戻ると、京子ちゃんはお昼寝してました(笑)。案の定開いているお店がみつからず、結局小さな食料品店1件でスナックや飲み物を買えただけだったんだそうです。
夜も同様だったので、ホテルのそばのバーガー・キングで済ませることになりました。
みなさんも、海外での日曜日には気をつけた方がいいですよー。
今回は、京子ちゃんが激写した、そんな寂しいオスロの街の写真をお目にかけますね。

旗が空しい。
カール・ヨハン通り。
普段はすごーく賑やかなところ。

目ぬき通り?
坂の上から駅方面を眺める。
ほんっとに静か。

.....。
これが王宮。
なんというか...広いですね...。

姿勢がよろしい。
衛兵のお兄さんもレインコート着用。

じゃ、買わせて!
って言われてもねえ。
お店が開いてないんじゃ。
なんかムカついたそうです。やっぱり。

こんなんばっか。
漢字なら何でもカッコイイのか?!
意味不明のセーター。
写り込んでいるのが京子ちゃん。(笑)

2002年2月25日

切符が買えない?!(またまた北欧ねこ三昧珍道中記 10)

オスロで3泊した後、今度は電車でスウェーデンのヨーデボリに向かいました。
切符を買うとき、ねこ連れで乗るので、と頼んであったので、4人用のコンパートメントに席があるはずでしたが、今回の例にもれず他の人がしっかり座っていて、いつも通り(笑)どいてもらいました。
相変わらずお天気は今一つで、空は曇っており時折小雨が降っていましたが、窓から見えるのどかな田園風景をながめながら、のんびりとした移動でした。

牛がいっぱい。

お天気がよければねえ。

車窓から見えるのはこんなのどかな風景ばかり。(写真は全部京子ちゃん撮影です。)

電車も可愛い。
ホームに着いたところ。
改札口がナイ。

人もいっぱい!
ヨーデボリの駅はさすがに大きかった。
なかなか風情があるでしょ?

ヨーデボリはスウェーデンの観光地の一つですから、駅も広く、駅のまわりには大きなホテルやビルが並んでいましたが、私たちの泊まるホテルは駅と空港の中間あたりにあるため、両替をした後、タクシーに乗りました。ホテルの場所を伝えると、運転手さんに「そこはもうヨーデボリじゃないねー」と鼻で笑われてしまいましたけど、ペット同伴可だし、シンプルで清潔だし、キャフェテリアのコーヒーは飲み放題だし、何より安くて(観光地だけあって、駅近辺のいいホテルは高かった)いいホテルでした。

チェックインの時間より早く着いてしまったので、キャフェテリアでコーヒーを飲みながら部屋の支度ができるのを待ちました。この小さなホテルは、高速道路沿いで空港に比較的近いため、空港へ、或いは空港からの中継点として利用する人が多いらしく、深夜近くには大変なにぎわいになったものの、昼間はガラガラでした。ですから、昼間はきれいなお姉さんとルーム・メイクをするおばさん数人がいるだけで、アットホームな雰囲気です。このお姉さんたちがとても親切で、ほんとによくしてもらいました。

ところで、北欧のホテルに行くと、よくカウンターのところに金魚鉢や植木鉢のような器に入れられたミントキャンディーが置いてあります。このホテルにも、白くて平たいキャンディーがざらざらと置かれていたのですが、今泉さんがこれを1こポイッと口に入れたら、隣にいたあきさんが「あーっ!」とすごく驚くではありませんか。勝手に食べたことに驚いたんだと思った今泉さんが「これ、食べてもいいんだよ。ミントでおいしいよ」と言うと、「え、これ、お菓子なの?」と笑い出すあきさん。あきさんたら、これを碁石だと思って(確かに白くてツルツルしてて平たくて、大振りの碁石みたいでした)「なんで碁石が置いてあるんだろう? しかも白だけ」と不審に思ってたんだそうです。この碁石キャンディー、夕方近所の悪ガキがホテルに乱入して一掴み取って逃げ、お姉さんに追いかけられていました。坊主の手際のよさといい、お姉さんの反応といい、どうやらしょっちゅうやってるみたいでしたね(笑)。

早めに部屋に入れてもらった後、まだ午後も早い時間だったので、私たちはヨーデボリに戻って少し遊ぶことにしました。
フロントのお姉さんに近くの駅の場所を聞き、時刻表をコピーしてもらってでかけました。途中通った大きな土管のような真っ暗なトンネルは昼間でも気味が悪くて、昔のトンネルを思い出しました。
駅は小さな無人駅で、券売機もそれらしいものも一つとしてありません。反対側の駅から下りるとスーパーマーケットがあり、そこで買えるのかなとも思いましたが、電車の時間まですぐだったので、とりあえず電車に乗ってみることにしました。

やってきた電車に乗りましたが、そこにも券売機らしいものはなく、ただタイムカードを押す機械のようなものがあるだけです。
どうしていいかわからない私たちはしかたないのでそのまま座席に座りました。次の駅で乗ってきた人の行動を見ていると、みなテレフォンカードのようなものをその機械に差し込んでいます。あれが切符なんだ。オレンジ・カードみたいなものかな? でも、どこで買うんだろう?
悩んでいるうちに終点のヨーデボリに着き、なんの改札もないまま町に出てしまいました。結局そのつもりはなかったのに、またもや無賃乗車してしまったわけです。ビクビクしてるのは嫌だし、無賃乗車するのは気持ちよくないので、帰りはちゃんと切符を買おうね、ここは大きな駅だから買えるよね、と、「帰りはちゃんと切符を買うぞ」と誓いを立てた私たちでした。

2002年3月11日

日本のはない?!(またまた北欧ねこ三昧珍道中記 11)

ヨーデボリはさすがにスウェーデン第2の都市で、大きな駅の回りにはたくさんのビルが立ち並び、とても活気がありました。
また、トラムという路面電車がどっさり走っていて、なんだか懐かしいような気がしました。横浜の路面電車は私がうんと小さな頃に廃止されてしまいましたが、もし廃止されずに利用され続けていたら、こんな感じの町並みだっただろうなと思ったのです。

たくさんのビルの間を歩いていくと大きなショッピングモールがあり、お店がずらーっと並んでいます。オスロで全くお買い物ができなかった私たちの心は弾みました。今日こそ何かお土産を買おう!

まずは全員で本屋さんのはしごをして、お目当てのノルウェージャンについての本を探しましたが、いいものが見つかりません。ノルウェージャンはやっぱりノルウェーだもんね、とオスロで本屋さんに行けなかったことが悔やまれました。スウェーデンでもハリーポッターが大人気で、どの本屋さんも目立つところにハリポタコーナーがあったのがおかしかったです。

それから、今泉さんと京子ちゃん、あきさんと私の2組にわかれて行動することにしました。いささか疲れていたあきさんと私は、2軒ほどお店を覗いた後ですぐにキャフェテリアに入って座り込んでしまいました。ここはおしゃれなショッピングモールなので、若い人向けの衣料品などのお店が多くて、日本でも買えるようなものばかりだったので、もうお買い物はいいや、ということになったのです。行きたいと思っていたペットショップもないようでしたし。
軽い食事をしてのんびりおしゃべりした後、京子ちゃんは何かいいものが買えたかな?なんていいながら待ち合わせの場所に行ったら、二人はお買い物ではなく「ポセイドンの泉」を見に行こうとしたけれど、時間が足りなくて途中で戻って来たのだそうでした。

少しお腹に入れたことと休んだことですっかり元気を回復していたあきさんとは違い、私は疲れでぐったりしたままでした。ここ数日のハードスケジュールと寝不足が堪えたようで、もう人ごみを歩く気力がありません。哀しいかな、このへんに歴然と現れる歳の差...。これからごはんを食べて、もう少し遊んで行くという3人に電車の時刻表を渡して、私だけ先にホテルに帰ることにしました。

そろそろ夕方で、学校や会社から帰宅する人たちで通りも駅も混み始めていましたが、何しろ切符を買わないとなりません。インフォメーションで聞くと、ホームをこえた先にあるビルの中で買えるというので、そのビルまで行って無事切符を買うことができました。それにしても、こんなに遠くてわかりづらい場所に来なくちゃならないなら、みんなわからないかもしれないなあ、帰りも無賃乗車になっちゃうかなあ、でも、3人一緒だから大丈夫だよね、とボーッと考えながら歩いていると、キオスクに各国の新聞が置かれているのを発見しました。日本の新聞が読める! そう思うとうれしくて頭がはっきりしました。ヨーデボリのホテルにはスウェーデン語の新聞しかなくて新聞が読みたくてしかたなかったからです。
中国の新聞、韓国の新聞、フランスの新聞、どうやらアラビア語らしい新聞まであるのに、日本の新聞だけがありません。しかたないので英語の新聞(なぜかヘラルド・トリビューンだった)と、一気にがっかりした自分を慰めるためにキットカットを1箱買って電車に乗りました。

なぜそんなに新聞を読みたかったかというと、前日おきたミラノでの飛行機事故のことを詳しく知りたかったのでした。その頃、同時多発テロに対するアメリカの報復攻撃が始まり、BBS や CNN のニュースはテロ一色。SAS の事故でしたから、スウェーデンの新聞には一面に大きく出ていたのですが、スウェーデン語でわかりません。短い乗り継ぎのフライトですが、SAS に乗る予定があったため、やはり気になっていました。電車に乗って新聞を広げましたが、やはりテロ問題ばかりで、スポーツ欄に小さく出ている日本のプロ野球の勝敗などを眺めていたら降りる駅に着きました。

私たちがアメリカの報復攻撃の開始を知ったのはオスロのホテルででした。テレビをつけっぱなしにしてみんなでごはんを食べていたら、緊急ニュースとして入ったのです。私たちもびっくりしましたが、日本にいる家族の方が心配するだろう、と日本が朝になるのを待って家に電話しました。つれあいは私の電話で起こされて事態を初めて知ったそうで、「心配しなくていいよ」という私の言葉に、寝ぼけ声で「うん、わかった」と答えていました。なんだか電話した甲斐がなかったなあ、と思いましたけど、その後心配性の母親がつれあいに電話してきたそうですから、一応電話しておいてよかったみたいです。(笑)

さて、電車から降りた私は、読みかけの新聞とキットカットをお土産に、少し暗くなってきた道をホテルに向かって歩いていました。人通りもほとんどない道を、二人乗りのバイクが追いこして行きます。
ホテルまであと少し。
でも、この直後、テロ報復攻撃よりも飛行機事故よりも、もっと私を怯えさせることが起きたのでした。

2002年3月26日


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