ねこのあな


― 森のねこのたわごと ―


もう1匹の黒ねこ。(またまた Sweden ねこ三昧珍道中記 4)

リタさんのお宅には、ヘレオくん、いや、ハリーくんが来る前にもノルウェージャンがいました。やはり真っ黒な女の子で、この子のことは知っていました。今泉さんはブリーダーであると同時にマニアなので(笑)いいノルウェージャンのことは実によく知っているのです。
このブラックの女の子は、知り合いのブリーダーさんのところ出身だったこともあり、その後のことが気になっていました。どうやらもういないらしいのだけれど、あまりにも若いし、一体何があったのだろう、何が悪かったのだろうと密かに心配していましたが、聞くことはできずにいました。
その子のことをリタさんが話してくれたのです。

彼女が来てしばらくたって、リタさん一家はポーランドに里帰りすることになりました。この子をどうしようと思っていたら、よく遊びに来ていて、彼女のことをとても可愛がっていたお友だちが預かってくれると申し出てくれたのだそうです。
彼女はそのお友だちにとても慣れていましたし、短い時間だから、とリタさんたちはお友だちにその子を預けてポーランドに旅立ちました。
ところが、帰国したリタさんを待っていたのは「ねこがいなくなってしまった」という信じられない知らせでした。開いた窓の隙間から外に出てしまったらしいと。
リタさん一家は狂ったように愛猫を探し歩きました。そして、見つけたのは交通事故にあった、変わり果てた姿だったのです。
私はたびがいなくなったあの夏のことを思い出しました。そのときのリタさんたちの気持ちを思うと、胸が痛くなりました。

「とてもきれいな姿でね、まだ暖かくて、事故にあって間がなかったようなの。もうちょっと早く帰っていれば、もうちょっと早く見つけてあげていたら、と思うとたまらなかった。それ以来、何があってもねこを人に預けたりするのは絶対やめようって決めたの」

預けたリタさんたちも、預かったお友だちも、そして何よりその子自身も、みんなが悲しくてやりきれない結末でした。

「彼女はとてもきれいで愛らしくてね、ハりーよりももっと長いしっぽだったのよ」
リタさんは悩んだそうですが、小学生の息子さんがあまりにも悲しむので、彼のねことしてハリーくんを連れてきたのだそうでした。
「じゃあ、今はここにハリーくん、それにみんなの心の中にあの子、リタさんたちは2匹の黒いノルウェージャンと暮らしているのね」私が言うと「そう、そうなの。あの子はずっと私たちの心の中にいるの。そして、私たちを見守ってくれてるんだと思うのよ」とリタさんは応えました。



可愛いヘレオくんことハリーくん。

今は夏、窓を開けることも多い季節です。何か外に気をひくものがあれば、外に出たくなるかもしれません。網戸は簡単に破れてしまうかもしれませんし、賢い子なら引き戸を開けてしまうかもしれません。
また、ベランダだから大丈夫だと油断していると、集合住宅ならお隣のベランダに移動して、そこから出てしまったり、転落してしまう可能性もあります。怪我がなくてもパニック状態になって走り出してしまうかもしれません。
外に出れば、迷子になってしまったり、誰かに連れていかれてしまったり、交通事故にあったり、他のねことの小競り合いで怪我をしたり病気をもらってしまったり、恐い可能性は山ほどあります。
くれぐれも気をつけなければ、と思いました。
みなさんもほんとに気をつけてくださいね。

2003年7月30日

共通の楽しみと異なる味覚。(またまた Sweden ねこ三昧珍道中記 5)

リタさんのお宅にお世話になったのは平日だったのですが、次の朝も小学生の坊やが一緒に遊んでくれました。どうやら遠いアジアからの来客が珍しくて楽しくて、学校を休みたいとお母さんに頼んだのだそうでした。彼がそういうことを言うのも珍しいし、いい経験だから許可することにしたの、とリタさんは笑っていました。

リタさんはたくさんの国で暮らしたことがある人なので、たくさんの言葉を話しますし、英語もすごく流暢です。坊やはママよりもっとネイティブに近いきれいな発音ですが、ときどきうまく話せなくてママに教えてもらっていました。「日本のことを聞いたり、英語を話したりするのは彼にとってチャンスなのよ」そういう時のリタさんは、しっかり者のお母さんって雰囲気です。

スウェーデンの子供たちは小学校高学年から英語を勉強するそうで、以前おじゃましたブリーダーさんのお宅でも、英語を勉強し始めたお嬢さんとたくさん喋ってほしいと言われました。北欧ではほとんどの人が英語を話すので、もっと画期的な方法で勉強しているか、子供の頃から英語をバンバン使う環境なのかと思っていましたが、日本とさほど違いないようです。とは言っても、日本にいるよりは英語を話す機会が多いのは確かな気がします。言葉って、必然性がなければ喋りませんし、喋らなければどんどん忘れて下手になってしまいますから、日本人はやっぱり損かなーって思います。
言葉の大切さを実感しているリタさんは、坊やに近所に住んでいるアメリカ人の家庭教師をつけて勉強させているのだそうでした。だから発音いいんだー、と納得しました。

日本の文化や漢字、折り紙などを話題にした前夜とはうってかわって、坊やにプレステ2でFFの画面を見せてもらったりして遊びました。
これ、なんだか変ですけど、テレビゲームとポケモンは今や子供の世界では万国共通の話題みたいです。私もゲーム大好きよ、でもプレステ2はまだ持ってないんだー、いいなーと言うと、坊やは大喜びでいろいろ教えてくれました。たいへん盛り上がって、電車の時間が近づいたとリタさんに促されても、坊やはもっと遊びたそうでしたが、ここで彼とヘレオくんに別れを告げ、リタさんの車で駅まで送ってもらわなければなりません。

別れ際、坊やは私にプレゼントをくれました。
「これ、スウェーデンの人たちがみんな大好きなものだよ。是非食べてみてよ」
それは何やら黒いキャラメルかグミのようなもので、甘いお菓子のように見えます。新しい若いボーイフレンドの心遣いがうれしくて、ニコニコしながらそれを「ありがとう!」と口に放り込むと......。

げえええええ。すごい塩っぱい!なんじゃこれー!と叫んでしまいました。坊やは大笑いしながら「リコリスっていうんだよ。みんな大好きなのは本当なんだよ」と言ってましたけど、ウソだろオイ、って気分でした。
ほんっとうに塩っぱくて、唇がシワシワになるほど。まずい海水のような味がします。せっかくくれた坊やに申し訳ないしなーと我慢してたのですが、リタさんが苦笑しながら「外国の人には不評なの。それで反応を面白がってるのよ。無理しないで」と言ってくれたので、内心(でしょ、でしょー?!)と自分を正当化し、坊やと別れた後、車の中でそっとハンカチに出してしまいました。こんなマナー違反、私絶対やらないんですよ。それほどまずかったんです。そして、吐き出しても妙な味が口に残ってマシタ。あー、今思い出してもヤダ。

後で、リコリスって確か漢方薬だったと思い出し、からだにいいお菓子???と思ったのですが、でも、あの塩気は絶対からだに悪い気がします。ガッツと好奇心のある方は、北欧旅行の折りには是非お試しください。味の保証はしませんけど。(笑)

2003年9月27日


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