ねこアパート

1001号室

木幡 ノエル

こわたのえるです!

木幡 ノエル

ぽすと

はじめまして。わたし、ノエルっていいます。
森のねこさんのところのノルタさん、めるとさんと同じキャッテリーで去年の12月30日に生まれました。
3月10日に、新しいおとうさん、おかあさん、おねえちゃんのところに来たばっかりです。
この度、おかあさんに勧められて、ねこアパートに入居申し込みしました。
よろしくお願いします。


July 19th, 2000

ヤマトさんがきた!

ここへ来て一週間が経ちました。
私はもうすっかり新しいお家の家族として元気に駆けまわる毎日です。
一階のお部屋だけでなく、二階のお部屋にも探検にいったし、階段だって平気で上り下りできるんです。

そんな日曜日の午後でした。
お昼を食べ、ぽかぽかと暖かい窓際でうとうとしていると何か黒い影がちらっと現れました。
それは、優しい声で「ニャー」というのです。
お母さんは声を聞きつけて「ヤマト?!」と窓のところに来ました。ヤマトさんは、また「ニャー」と鳴いて外から窓のところに前足をかけました。その時、わたしに気づいたのです。

一瞬固まったヤマトさんは、打って替わった激しい調子で
「あなた、誰!!」と激しく叫びました。
それから、ガラス越しに私を嗅いで「ガラス越しじゃ匂いも判らない。もっと近くに来なさいよ、礼儀を知らない子ね!!」と恐い声で言いました。
私は途方に暮れて、招き猫のように片手でガラスを掻いて
「おねえさんがきてくださいな。私はこの戸開けられないんです。」と言うのがやっとでした。
ヤマトさんは、くるりと背を向けると1メートルくらい歩いてから振り向くと低く唸りながら、またゆっくりと近づいてきました。
「最近、子猫の甘ったるい声がするなぁって思ってたのよ。なによ!!この家は私が時々遊びに来る家なんだから!!あんたの場所なんてないんだからね!!!」
          
おかあさんは困っていました。「ヤマトはもうよその家でかわいがられているし、家にはもうノエルがいる。もう、前のようには迎えられない。」と。
おかあさんは、そっと私を抱き上げると窓から離そうとしました。でも、私はもう一度窓際に戻って、ヤマトさんにこう言いました。
「ごめんなさい。ヤマトさん。でも私この家の子になったんです。ヤマトさんは自分で好んで今居る家に行ったんでしょう?だったら、そこで幸せになってくださいな。」
          
ヤマトさんは黙ってくっと睨んでいましたが、
「なまいき言うんじゃないよっ!!!」と叫んで、私の鼻先のガラスをバンッと音立てるほど、すごい力で殴って唸りながら、行ってしまいました。
私は全身の力が抜けたように呆然と座り込んでいました。
でも、それから、そっと抱っこしてくれたお母さんに、
「ねえ、お母さん、これでいいんですよね。」と言いました。

その晩、私は熱をだしました。
おなかの調子も変でした。
あの騒ぎのあとから、だんだん気分が悪くなってだるいし、ご飯もたべたくないし。
ごろん、と転がったまま立ちたくもない。
半べそのお母さんにかかえられ、お父さんが車をとばし、おねえちゃんも付き添ってくれて夜遅く動物病院の夜間診療で、手当を受けました。
お医者さんには、ストレスか過労でしょうと言われました。



でも、もう私はだいじょうぶです。



だからこんなにリラックスして眠れるの。



あれ、リラックスしすぎかな?



えへへ、変なとこで眠っちゃった。

 前のお話です。
わたしがこの家に来ることになったいきさつ  (2000.4.22)
ノエルがきた! (2000.5.24)

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