ねこアパート

802号室

明石 モモ&葵

September 27th, 1999

モモのお話(モモとケイとヒロのこと。)

4時5分、いつも通り目が覚める。うぅ〜んっ、思いっきり伸びをする。
「ぅ〜んにゃっ。」
ベッド目指して走る。まだ夢から覚めていないケイが、いつものようにモモが寝る場所を作る。ケイの二の腕はモモが顔を乗せるのにちょうどいい高さ。ケイが起きるまで、もうひと眠り。

5時40分、目覚し時計がなる。ロボットのようにケイは時計を止め、テレビのスイッチを入れる。番組は天気予報。以前は天気予報のおにいさんが日本地図の上をなぞる棒をおいかけるのが楽しかったけど、そんな子供っぽいことも飽きてしまった。最近は、物知りのおじさんが新聞紙をなぞる棒を追いかけている。
ケイが起きた。朝の戦争のはじまり...ケイのドレッサーの上に避難しなくっちゃ。

みんなおきてー!

6時10分、ヒロが起きた。「グッドモ〜ニャン!」

6時30分、だんだんヒロとケイが出かける時間が近づく。「行かないでぇ」とヒロのひざにすがりついて甘えてみるけど、ヒロは頭をなでるだけ。
っん?!ケイが階段を上がってくる。朝ごはんだぁ!

6時50分、ヒロとケイが出かけちゃった。少し眠ろうっと。

ウニャ。

モモがケイと初めて会ったのは、雑然とした東京駅新幹線ホーム。週末家で過ごそうとする単身赴任者たちでごったがえしていた。今までいた平和な家から連れ出されて、さみしくて泣いてばかりいた。
少し静かなところで、ひょいっと外に出され、新しい箱に入れられた。その箱の中をのぞく見知らぬ顔。それがケイだった。何だかよくわからないけど、ケイの顔を見たとたん、泣くのをやめた。すごく不安そうな顔をしてモモのことを見てた。
あとで知ったんだけど、ケイは猫というものをさわったことすらなかったんだって。それからヒロも迎えに来て、3人で家に帰った。すごく寒い日だった。

ケイはモモを1人で寝かせようとした。
マティスパパもゆめママもお友達もいなくて1人では眠れない。ケイが部屋から出て行こうとすると後についていった。でもケイはモモを部屋に閉じ込めてしまった。
夜中にケイが見に来た時、モモはベッドから出て、いすの上に丸まっていた。ケイはしばらく一緒にいてくれたけど、また出て行っちゃった。ぐすん。

だって、女の子だもん。

う〜ん、目が覚めた。最初の日の夢を見たよう。
弁護しておくけど、ケイはモモにいじわるしていたんじゃない。How to 本に「猫専用のベッドで寝るようにしつけないと毎日起こされて猫嫌いになる」なんてナンセンスなことが書いてあったんだって。
でもヒロに「日中1人でいるのに夜も1人で寝させるのは酷でしょう」と言われて、「モンになんてひどいことをしてしまったんだろう」って泣いてた。(ケイはモモのことを"モン"って少し語尾を上げ気味に呼ぶ。フランス語みたいに聞こえるよ。ヒロはモモのことを"モモッチ"って呼ぶ。こっちはロシア語みたい。)
今では3人で川の字になって寝てる。ただケイは寝相が悪いからちょっと安心して寝ていられないんだけど...。



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